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バスターアリス
第2回
text なか まこと / Illust & 原作 杉本ニトロ


 上体を起こしたトオルは仰天した。数え切れないほどの真っ白で均一な形と大きさをしたウサギのクッションに横たわっていた、と感じた瞬間、そのクッションウサギたちがぞわぞわ動き出したのだ。更に自分は白いエプロンとくるぶしまでの黒いスカートをはいている。「オレって女だったけ?」などと考えている間もなく、背後から声を掛けられた。

「あー、いたいた!!ほら急がないと選手権大会が始まっちゃうじゃないか」

 振り返ると茂みの中から姿を現した、でかい蝶タイにチョッキ姿のウサギが、人間のように二本足で回り込みトオルの手を取るや、有無を言わさずぐいぐい引っ張りながら

「キミが10番目の候補者だろ?早く受付しないと!!」

 訳も分からず連れてこられた会場入り口には、大きく派手な「アリス決定選手権」の横断幕が掲げられ、トオルの姿を確認するとファンファーレが鳴り響き、会場を埋め尽くした観客総立ちで割れんばかりの歓声と拍手がわき起こった。

 受付に並ぶ候補者の姿にトオルはぞっとした。全員同じメイドさんエプロンだ。胸には番号入りの缶バッジが…「オレもあんな恰好してんのか」と思いながら手をやると確かにトオルの胸にも10番と書かれたバッジが付いている。そのとき触れた胸に違和感があり、かすかに残る記憶から、それとなく股間を確認して妙に安心した。

 一瞬の静寂の後、壇上のアナウンサーが興奮した声で

「さー!!いよいよやってまいりましたー!!アリス決定選手権!!優勝するのは一体どのアリスになるんでしょーかっ!!」

 辺りの興奮とは裏腹に訳の分からない出来事の連続でトオルは冷めた目をしていた。

 バニースタイルのお嬢さんが手で促す方向のパノラマビジョンに文字が浮き上がり

「注目の対戦方法はこちら!!大食い早食い対決ーーー!!」

 画像に切り替わり、大量のゴージャスメニューが映し出され

「これらの品を、いかに早く、いかに多く食べられた方が優勝です!!」

 トオルは腹の空いている自分に気づいた。

 二人のバニー嬢が左右に歩くに従いドアが開き、映像の期待を遙かに上回るごちそうの山がせり出てくると、会場全体からうねるような歓声が沸き起こった。

「レディー、ゴー!!」

「ぬおおおおおおおっ、なんかわけ分かんねぇけど燃えてきたぞおおおおおおっ」

 一番に間近のイスに駆け込んだトオルはあまりの美味しさに我を忘れ食いまくった。

「おおーっと10番のアリス選手、物凄い食べっぷり!!他の選手の追随を許しません!!」

 トオルが締めのジュースを飲み終わると同時に、バニー嬢が近づき壇上に上げられた。

「見事優勝は10番のアリスさんに決定ー!!」

 歓声の嵐の中、トオルの頭では再び無数のハテナマークが飛び交っていた。

「優勝のアリスさんには賞金10万円と…」

 バニー嬢から現金が手渡された。

「冒険の旅に出てもらいまーす!!」

 アナウンスが終わるやいなや観客が押し寄せ、会場の外に担ぎ出された途端、ふわりと着地した感じがして振り返ると、会場も観客も消えた草原に立っていた。

「ちなみにボクが道案内」

 声のしたほうを見下ろすと、あの二本足で歩くウサギがにこやかに

「ジョーってんだ、よろしく、こっちだよ」

 トオルはジョーの向かうがままに歩を進め

「よろしくって……マジで冒険するの?オ、オレ…あれ?オレ??…」

「オレって、キミはアリス候補10番、…じゃなくって、キミが!アリスだよ」

「オレがぁ?…オレがアリスぅ?なんか足らないような…」

「決定戦でキミが優勝したんだ、だからキミが、アリスに決まってるじゃないか」

「決定戦?そんなのあったっけ?」

 頭が混乱しているトオルには、そのときジョーがニタリっと意味ありげな笑みを浮かべたのに気づかずにいた。

「まあいいでしょ。お腹空いてないでしょ?さあ、冒険冒険」

「ん?ああ、そうだね。…つうか冒険って何をどーすればいいワケ?目的は?」

「えっ!こういう場合、当然、悪の大魔王を倒すのさ、常識だろっ」

「大魔王?悪の?常識?…てと、アイテム探してヒットポイント上げて」

「そりゃゲームだっちゅうの」

「ごもっとも。じゃ、どうやって?つーかどこにいんの?どーすりゃいいの?」

「ま、その辺はボクに任せて。とにかく大魔王を倒せばキミは元の世界に帰れるようになるから…疲れたろう?宿探そう」

 
  −−−つづく  


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