A-KIBA BOOKSのフリーノベルは、広告収入で運営されております。作品がお気に召しましたら、どうぞリンクのクリックを☆


ネコ型ももこ量産部
第4話
text 十七尉 / Illust あさのむつき

 量産部作戦会議。

「完成したのはこれだけか……」

 ももこが手にしているもの、それはカチューシャのような形状で、しかし微妙に違う。

「それは……ネコミミ?!」

「はい……計画はそれが限界でした……」

「……仕方ないか……聖一くん」

 ももこは聖一の頭にネコミミを取り付けた。

「君は今日から『ネコ型ロボット』だ」

「は?! いや意味がわかりませんから!」

「ロボットの語源は『強制労働』、そう考えれば、聖一様は立派なロボットです」

「いや、それはそうでもそれはダメだろ!」

 と聖一は反論するが、例のごとく彼の意思は無視される。

「よし、作戦は決まった……朱乃、念のため私たちの分のネコミミも作っておきなさい」

「まかせてくださいももこ様」

「いや、なんか話の方向おかしくない?!」

「そうであります。自分も異議があります」

 珍しく、仁美が否を唱えた。

「おお、仁美さんも言ってやってください」

「自分は、ウサミミの方がいいであります」

「そうじゃない!」



 そして決戦の日、部室の前に集合した量産部員達。聖一は律儀にネコミミをつけている。

「ついにこの時がきたな」

「自分、燃えてきたであります」

「準備も万端ですももこ様。これを!」

 そう言う朱乃の後ろには、高々と山積みにされたネコミミが。

「さすがだな朱乃!」

「現在も地下工場で量産中です」

「意味なくない……?」

「お待たせいたしましたわももこさん!」

 突然、グラウンドのほうから千夏の声がした。部員達が振り向くと、そこには、高さ10mはあるかという巨大なネコが……。

「あれが千夏のネコ型ロボット……!」

 千夏はネコの頭の上に立っている。と、量産部員一同はそこであることに気がついた。

「! あのネコ型ロボット……耳がない!」

 確かに、形は実物のネコそのものなのだが、その頭の上にあるべきはずの耳は無かった。

「驚いたかしら! 耳が無いというのがこのネコの画期的な点でありますわ!」

(画期的……!?)

「別にお経を書き忘れたとか利根川とEカードで勝負したとかではありませんわ。きちんと理由がありますの……そこの新入生!」

 千夏が聖一を指差した。

「ネコ型ロボットと聞いて、最初に思い出すのは何かしら?」

「え………………まさか!」

「そう! ドラ○もん! この機体はそれを基に設計されていますのよ! 故に無耳!」

「な……なんてどうでもいい理由!」

「あれほどではありませんが、既存のネコよりは遥かに高性能! さあ、決闘ですわ!」

 千夏の乗ったネコが一歩進み出る。それを見て、聖一は一歩退いた。

「おいおい、敵前逃亡は敗北だぞ聖一くん」

「いや、どっちにしても負けますって!」

「大丈夫であります聖一殿。負けても安心するであります」

「仁美さん……」

 仁美は懐刀を取り出し、自分に向けた。

「その時は……一人では! 一人では逝かせはしません! 自分も! 自分もすぐに!」

「ダメだろ! むしろ安心できませんよ!」

「そういうわけだ聖一くん。逃亡は敗北、敗北は死と同義」

「……え〜……」

 仕方なく、聖一は前へ進み出た。

「? その子、人間ではなくて?」

「ロボットだ」

「むう……まあ構いませんわ。生身の人間に負けるようなネコではありませんですもの」

 簡単に納得する千夏に、聖一は絶望した。

「さあいきますわ!」

 千夏のネコがゆっくりと歩き始めた。

 それを見た聖一は逃げ出そうと思ったが、後ろを見れば朱乃が敵前逃亡者に対する鉄拳制裁の構えをとっていた。逃亡=死である。

 仕方なく、聖一は敵のほうを向いた。

「くそ! こうなったら……やってやる!」

 敵ネコに向かって聖一は走り始めた。

「ふふ、無謀ですわ! 我が鳳凰院グループの誇るネコ型ロボット開発レーベル『無苦味(No bitter)』の作り上げた最新・最強機体『平八郎』の威力、とくと見よ!」

 そう言って千夏がネコの頭を叩くと、ネコは前足で聖一を蹴り飛ばした。

「ぐは!」

「聖一くん!」

 吹っ飛ばされた聖一にももこは駆け寄った。

「なんてこと……聖一くんがボロ雑巾のようにやられてしまうなんて……! 衛生兵! えいせいへーい!」

「まかせるであります」

 医療器具を持った仁美は聖一に近づくと、瞬く間に傷を治した。

「よし、聖一くん行きなさい」

「え……」

 仕方なく、また敵に向かう聖一。

「往生際が悪いですわね!」

 再び、ネコに蹴り飛ばされ吹っ飛ぶ聖一。

「く……衛生兵!」

「まかせるであります」

 すぐに治され、また敵に向かわされる聖一。当然、また蹴り飛ばされる。

「衛生兵!」

「まかせるであります」

 またすぐに治療されてしまう。

「さあ聖一くんもう一度……」

「って、いい加減死にますって!」

「大丈夫であります。当軍医部の医療スキルは県内屈指であります」

「そうじゃなくて!」

「包帯と消毒液は地下工場で量産している」

「そうでもなくて! 埒があかんですよ!」

「む。それもそうだな……朱乃!」

 朱乃は呼ばれるとすぐ、聖一のそばに来た。

「ふふ……このネコミミの真価を発揮するときですね」

「真価……?」

「はい。実はこの耳の部分、内部にTNT火薬が詰まっているのです」

「えええ!?」

 聖一は急いでネコミミを取り外した。

「そうだ聖一くん、それを投げつけるんだ」

「てかそんな危ないものを人の頭に……でも、これならなんとか! おりゃ!」

 聖一がネコミミを投げると、それは上手いこと千夏のネコの前に落ちた。

「よし!」

「ナイスです聖一様!」

「流石であります!」

「あとは起爆するだけだな! くらえ!」

 ももこが、いつの間にか手に持った起爆スイッチを押した。ネコミミは爆発し、千夏のネコは少しぐらつく。

「効いている! みんな! もっとネコミミを投げつけるんだ! 倒せるぞ!」

「く……どういうことかしら!? あの程度の爆発平八郎にはなんともないはず……!」

 千夏はネコの頭を叩いた。

「どうしたの! しっかりなさ……は!」

 千夏は異変に気づいた。投げつけられたネコミミを、ネコはじっと見つめている。

「まさか……あなたネコミミに未練が!?」

 そんなネコを見て、ももこは好機を察した。

「なんかわからないが……とにかくチャンス! みんな! もっとネコミミを!」

 ネコの前にネコミミは積み上げられていく。

「完璧にロックされているはずの平八郎のマザーコンピュータが自我に目覚めるなんて……ネコミミ……甘く見ていたわ……」

 そして、千夏のネコは爆発した。



 黒焦げになったネコ。

 その前で、千夏は力なく倒れこんだ。

「私の負けですわ……鳳凰院グループの宣伝として存在する販促部が、まさかこんな醜態を晒すことになるなんて……」

「何言ってる。立派だったじゃないか」

 ももこが千夏に手を差し伸べた。

「ももこさん……ダメ、敵の施しなど……」

「敵? ふ……何言ってるんだ」

 ももこは千夏の前にネコミミを投げた。千夏はそれを手に取り、驚愕した。

「これは……この手触り、光沢……間違いない……カシミア製のネコミミ!」

「そうよ千夏。あなたのために、カシミア製で作っておいたのよ」

「ももこさん……!」

 こうして、五人目の部員が入部した。



 量産部ミーテイング。

「というわけで、我が部の存続は決まった」

 部員達が歓声を上げる。いろいろと振り回された聖一も、素直に嬉しかった。

(情が移ったかな……)

 そんなことを考えていた。

「今日は記念パーティーだ。存分に楽しめ」

 ももこもかなり嬉しそうである。

「私、ケーキを持ってきていますわ」

「自分は、飲料水を確保しております」

「地下工場では、ロウソクも量産中です」

「おお……」

 用意のいい量産部員たちに聖一は感心した。

「ふふ……流石ね」

 ももこはマッチに火をつけた。

「でもこのロウソク、なんか大きくない?」

「ええ。ロウではなく、TNTですから」

「…………え?」



 量産部、大破。



「………………退部しよう……」

 瓦礫の中で、そう決意する聖一であった。


  (おしまい)  


WebコンテンツTop キャラクター紹介 第5話