A-KIBA BOOKSのフリーノベルは、広告収入で運営されております。作品を読んで面白いと思われた方は、リンクのクリックをお願いします。

お散歩日和まっしぐら
第2話
しいなけっと(text)  早坂光平(Illust)

 今日はお休みです。初デートです♪

 わたしは自分の部屋で、大神くんが迎えにきてくれるのを瞑想しながら待っています。

 こうでもしていないと、想像妊娠してしまいそうなのですよ。

 昨晩、大神くんから電話でお誘いがありました。

「明日、お散歩にいきましょう」

 そうです。“犬”になりますと宣言したわたしにとってデートとはお散歩のことなのです。

 頭部にはヘアゴムで結んだ一対の髪の房を垂れ下げ、首輪の代わりにシンプルな皮のチョーカーを着けています。

 さすがに尻尾までは恥ずかしくて用意しませんでしたけど、犬好きの大神くんの期待に応えられるように精一杯のおしゃれをしました。

 気に入って貰えるでしょうか……「日和ちゃん、似合ってるよ」「あっ、そんなぁ昼間っから」「嫌かい?」「ばかぁ……」。

「じゅるり……はっ!」

 いけません。デートの前にショーツを汚してしまうところでした。

 妄想、もとい瞑想再開。

 その時、チャイムの音が聞こえました。

「大神くん、おはようございますです!」

「日和ちゃん、おはよう」

 自室から玄関の扉を開けるまでの時間を超越したような気がします。愛の力恐るべしです。

「あはは、ホントに犬耳が似合ってるね」

 はわわっ、大神くんの指がわたしの髪の毛に触れていますっ。

 今晩のオカズが一品できました。

「きょ、今日はどこに行くのですか?」

 遊園地でしょうか。いえ、初デートですし、まずはウインドウショッピング辺りから?

 ま、まさかいきなり“らぶほてる”なんて……!

「う〜ん、公園は狭いしなぁ。河川敷にでもいこうか?」

「うわぁい、とてもお散歩らしい響きですねっ!」



 空は雲ひとつない晴天です。太陽の光が燦々と降り注ぎ、川面が眩しく煌めいています。

 風はそよとも吹かず、暑いぐらいです。

 ニコニコと微笑んでいる大神くんの手にはフライング・ディスクが握られていました

「一度やってみたかったんだ。ディスクドッグ」

「わーい、楽しそうです!」

 涼子ちゃん、ボケ同士だと収拾がつきません……。

 でも、大神くんの笑顔のためならば、もうなんだってやっちゃいます。

「日和ちゃん、いくよ〜」

 大神くんが綺麗なフォームでディスクを投げました。

 ディスクが頭上を越えていきます。

 わたしは必死に走り、低空まで落ちてきたディスクをなんとか手でキャッチしました。

 休む間もなく、大急ぎで駆け戻ります。

「はひはひ。と、取れました〜」

 早くも息が切れ、汗が流れ落ちています。

「駄目だよ、日和ちゃん」

 珍しく困った顔をしていました。

「ディスクドッグなんだから“口”でキャッチしないと」

「そうですよね!」

 これはなんのプレイでしょう……。

「いくよ〜」

 再びディスクが頭上を越えていきましたが、すでに方向を予測して駆け出しています。

 ふふふ、人間と犬畜生の差です。

 これなら口でもキャッチが……。

「はぅん?!」

 急激にディスクの軌道が曲がり始めます。

「ちぃぃ……!」

 わたしは加速に乗った体の進行方向を変えるために、その場でコンパクトに“回転”をしました。ヨーヨーの理屈です。屁理屈です。

 これぞ、日和流ディスクドッグ術・地駆犬閃(ちかけるいぬのひらめき・閃きは電球マークだよっ)!

 ディスクを補足すると、回転によって弱まった慣性に逆らい地面を蹴りました。

「バウッ!」

 地面に落ちる直前にディスクを口でキャッチ!

 わたしはそのまま地面にヘッドスライディングしました。

 あ、愛の勝利です。

「日和ちゃん、凄い凄い!」

 無邪気に喜ぶ大神くんのもとに汗だくでヨロヨロと駆け戻ります。

「はひはひはひ。これでいいでしょうか?」

「うん、エライエライ」

 はわわっ、大神くんの手が、わたしの頭と顎の下を撫でています!

「よ〜しよしよし」

 あんっ。もっと下の方でも……!

 今夜のオカズがもう一品増えました。

「今度はもっと遠くに飛ばすよ!」

「頑張ります!」

 欲情、もとい愛の力の前ではいかなる困難も無意味なのですよ。

 プラス10メートル。キャッチ成功。

「はひはひはひはひ」

「よ〜しよしよし」

 プラス20メートル。キャッチ成功。

「はひはひはひはひはひはひ」

「よ〜しよしよし」

 プラス30メートル。キャッチ成功。

「はひはひはひはひはひはひはひはひ」

「よ〜しよしよし」

 プラス40メートル。キャッチ成功。

「はひはひはひはひはひはひはひはひはひはひ」

「よ〜しよしよし」

 わたしってオリンピックに出場できるんじゃないでしょうか……。

 プラス50メートル。キャッチ成功。

「はひはひ……はひ……」

 でも、さすがに、限界です。

 わたしは大神くんの手前で倒れ伏してしまいました。

「日和ちゃん!」

 仰向けになると、駆け寄ってきた大神くんにディスクを手渡しました。

「ご、ご主人さまのお手を煩わせるなんて、ディスクドッグのパートナーとして失格ですね……」

「ううん、日和ちゃんはよく頑張ったよ!」

 大神くんが汗で透けた服の上からわたしのお腹をわしわしと撫でてくれます。

 ……やらしい意味はないはずです。犬とじゃれ合っているようなものです。

 で、でも手のひらが胸に……。

 あぁんっ、おへそは弱っ……!

 河川敷にはわたしたちの他にも人がいます。

 ディスクドッグですでに注目の的なのにぃぃぃ、こ、こんな羞恥プレイ……癖にな・り・そ・う。

「はぁはぁはぁ……」

 今夜のメインディッシュができました。

「日和ちゃん、疲れただろう? 何か冷たいものでも飲みにいこうか」

「は、はひ」

 主に下腹部から水分を消費してしまいました。

「素敵なドッグカフェを知っているんだ」

「ドッグカフェ……」

「やっぱり嫌だよね?」

 表情が沈みます。

「いえっ、大神くんのいきたいところならどこにでもっ!」

「良かった」

 大神くんがニコニコとわたしを見つめました。

 ぐすん。罪作りな笑顔です……。



  −−−つづく!



WebコンテンツTop >キャラクター紹介 第3話