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桜ちゃんとこのお友達事情。
第2話
text 相田伊亜 / Illust daiya◆K・たに



 うっわ…。

 城門の中には、とっても広い中庭がありました。背高ノッポの頑丈な城壁の外からは伺いしれない世界。

 そして、中央にそそり立つ城。

 某ランドの砂被り姫城とは違うなぁ。

 「今夜はここに泊まる。多分、ここまで手が回ることはないと思うが…」

 などとユマさんが話しながら、玄関まで歩いていると、いきなり城中に明かりが灯り、ライトアップまでされてしまった。

 「な、何?」「くそ、誰だ」「どこからっ」

 ユマさんは手に刀を、アンナローズさんはあたしを背中に庇い、構えた時。

 「お帰りなさいませっ! お嬢様っ!」

 玄関の扉が開くと、金髪ふわふわのメイド美女が現れた。

 途端に、ユマさんが膝から崩れ落ちる。

 メイド美女はそんな彼女に近づくと、覗き込み、「そんなに感動した?」

 「フラン様、その服は新作ですの?」

 アンナローズさんは目をキラキラさせて、メイド美女の服に手を触れる。

 「シルク? いいな、いいな〜」

 身をよじってうらやましがっています。

 「アンナ、その服、着てくれたのね。やっぱり、似合っているわ〜」

 両手を握り合って、褒め合っています。

 とりあえず、敵じゃない、んだよね?

 はしゃいでいる二人を横目に、まだ立ち直れていないユマさんに近づいた。

 「大丈夫…?」

 恐る恐る声を掛け、彼女の顔を覗き込むと、うつろな瞳で何かぶつぶつ言っている。耳をすますと『…んで、なんで、なんで』。

 そして、ガバッと顔を起こすと叫んだ。

 「なんで、フランチェスカ様がいる?!」

 メイド美女は、さも当然のような表情で。

「噂の桜を見に来たに決まっているでしょ」

 噂って…瑠架、あなたはあたしについて、どんな噂をしているというの…。

 「そうじゃないっ! ここに今夜彼女を連れて来ることは極秘…って、まさか」

 ユマさんの顔全体に、どす黒い縦線。

 「ピンポ〜ン。瑠架ちゃんが教えてくれました〜」

 再びユマさんが崩れ落ちた。あぁ、今度は口から何やら白いモノがーっ。

 「安心して。ちゃんとローウィックには内緒にして、一人で来たのよ」

 メイド美女があたしの方を向く。

 ふわふわ金髪の中の顔は、ちょっとたれ目の甘め美人さん。蒼い瞳が印象的。

 「はじめまして。フランチェスカです。瑠架ちゃんの近い親戚で仲良しなの」

 「はじめまして、飛田桜、です」

 見惚れてしまうような美人さんだな…。

 「桜、お腹空いていなくて?」

 言われて、いきないお腹が鳴ってしまった。

 恥ずかしさで赤くなる。

 「無理ないわ、ねー」

 アンナローズさんが微笑みながら、あたしの頭を撫でてくれた。

 「シェフに特製サンドイッチを作らせたから、持ってきたわ。中でお食べなさい」

 フランチェスカさんが手を握って、屋敷の中へと誘ってくれる。

 「フラン様、今夜はこちらに泊まられるのなら、お屋敷の方はいいの?」

 「瑠架ちゃんの一番新しい別荘に、桜を見に行ってくる〜、って、執事に言ってきました」

 ユマさんが身を起こした。

 「どこが内緒だーーっ!!」

 叫びだけが、夜の闇に響いておりました…。



 城の中の食堂。大人数用の長いテーブル。椅子には、かなり細かい彫り物がしてあり、見るからに高そうな雰囲気。

 こんなところで、フランス料理のフルコースとか食べるのが上流なのでしょうが、今、現実には山盛りのサンドイッチが自己主張中。

 「こちらはトリュフとフォアグラ入り。生ハムが好きなら、こちらね。フィレステーキのはこれで、キャビアとチーズはこちら」

 「お茶を入れてきます。桜様は、コーヒーと紅茶、どちらがお好き?」

 「コーヒーを」「はい、かしこまりました」

 にこやかにアンナローズさんが部屋を出て、「一通り見て来る」と、ユマさんも部屋を出る。そして、あたしと隣であたしを見つめるフランチェスカさんが取り残された。

 瑠架の近い親戚で、仲良しだという彼女。勇気を出して、あの事を聞いてみよう。

 「あ、あの、瑠架の『テスト』の事なんですけど…」

 フランチェスカさんの口がへの字になった。

 「その件については、わたくしには何も教えることは出来なくてよ」

 「いえ、内容とかじゃなくて、その…もし、『テスト』に不合格になったら、瑠架はどうなるんでしょうか…」

 精一杯、自分なりに頑張るつもりだけれど、万が一、約束が守れなかったら…瑠架はどうなるのだろう? それが、気がかりだった。

 「ペナルティは何もないわ」

 フランチェスカさんは、何故か面白そうに答えた。

 「家を追い出されるとか、怪我することになるとか」「何もないわよ。安心して」

 そこまで聞いて、ようやく安堵。

 「あなたは瑠架を責めないの? こんな大変な思いをしているのは、瑠架のせいなのよ?」

 んー、確かにそうなのだけれど。でも。

 「引き受けたのは、あたしの判断ですから」

 ふうん。そんな表情で、フランチェスカさんはあたしの頬に手を寄せる。

 「意外と自分意志を持っているのね。安心なさい。『テスト』は失敗することより、受ける『条件』の方が大事でね、受けられない場合は、我が家から永久追放も有り得るの。だから、桜が引き受けてくれた時点で、あの子の生活は保障されたようなものなの」

 そうか。よかった。

 正直、どんな生活をしているのかはわからない。けれど、彼女達のような人が周りにいるのなら、悪い生活じゃないと思う。

 それに。

 「瑠架に文句を言うなら、直接言います」

 もうちょっと、訳がわかるような手紙書いてよねー、ってまず言って、背中に一発チョップ入れてやる。あとは笑って、チョコレートパフェとケーキセットを奢らせる。で、他愛のない話で盛り上がるの。

 「楽しい事、考えているでしょ」

 フランチェスカさんの人差し指が頬をぷちゅっ。

 「ええ。瑠架と話したいこと、いっぱいあるんです」

 「うらやましいわね…」

 再び、フランチェスカさんの指が頬にぷちゅっ。

 「瑠架ちゃんにヤキモチ焼きたくなりそう」

 冗談言って…と言う言葉を飲み込んだ。目が据わってませんか?

 えーと「サンドイッチ、頂きます」

 「はい、どうぞ」

 ほっ。ようやくフランチェスカさんの表情が元に戻ったや。

 人生最初のフォアグラなるものを食べてみようと、手を伸ばしたところに、お茶セットを乗せたワゴンを押してローズアンナさんが戻ってきた。

 「ユマちゃんは?」

 「一通り見てくる、って出て行きました」

 「相変わらず仕事熱心」

 ちょっと苦笑い混じりの口調。

 「わたくしがいれば、大抵の者は手を出さないでしょうに、ユマは神経質過ぎるわ」

 フランチェスカさんも苦笑い。

 「フラン様は『絶対公平者』ですからね。でも、今回は、それにも異議を唱えている方がいますから、用心は必要ですけど…休憩も必要なのに」

 ね。そう言って、いい香りのコーヒーを出してくれた。

 「桜様、しっかり食べて元気を補充しておいて。明日、瑠架様と会えますよ」

 よし、食べる。

 口を大きく開けて、サンドイッチにかぶりついた瞬間、ドガンと大きな音が響いて部屋中が揺れ、電気が消えた。衝撃で椅子から転げ落ちたあたしを、フランチェスカさんが抱き締め、頭を撫でてくれる。

 「大丈夫。心配しないで」

 でも、その声は、囁くような小さな声。

 アンナローズさんは窓辺に近寄ると、カーテンの隙間から外を窺う。

 一瞬の沈黙の後に、激しい音と振動で窓ガラスが震え始めた。

 「来たか」

 いつの間にか、ユマさんが戻っていた。右手に刀、左手に大きな長い銃。銃は無造作にフランチェスカさんへ放って渡し。

 「使えますよね」

 「任せて」

 「アンナローズ、行くぞ」

 「はいな〜」

 二人が部屋から出て行く。

 「あの、二人はどこへ」

 フランチェスカさんは、銃をいじりながら「運動しに行ったのじゃなくて?」

 はい?




  (つづく)  


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