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死神課・業
第2話
いざぁ(text) ELIOT(Illust)



 「あんたは?」

 その死神は、近づく死憐を威嚇しながら近づいて来た。死憐は、相手との間合いを計り、立ち止まった。

「そこの子を迎えに来た者だ……」

「……そうか…… はこの母親を迎えに来ている者だ……」

 その死神は、威嚇を解き、ドクロの面を取ると、死憐に名刺を差し出した。

「死神課5課の久遠(くおん)です」

「あ、死神課9課の死憐(しれん)です」

 死憐もドクロの面を取り、お互いに名刺を交換すると、その場は少し和らいだ。久遠は死憐よりも若干若そうな感じだった。

「し……れん? シレン……? !!!っ!! 死神死憐っ!!」

 久遠は名刺を凝視して、顔を引きつらせた。

「(笑いながら)お前も死神だろうがぁ!」

 死憐は間髪入れず、突っ込んだ。久遠の顔は明らかに、こわばっていた。

「あっ、あんた、1ヶ月前、50人が死傷するハズの列車事故を未然に防いだ死神だろう! その前は、関係ないヤツ等の魂を刈っちまったって、聞いたぞっ!!」

「(笑いながら)いやっ! 誤解だっ! あれはたまたま成り行き上……そのぉ……」

 死憐は久遠をなだめようとする。

「(笑いながら)わっ!! 寄るなっ!!」

 久遠は、錯乱状態でカマを振り回した。

「(笑いながら)お前の仕事の邪魔はしないから、落ち着けっ!!」

 死憐は瞬時に大きなカマを出すと刃の裏を久遠の首にあてた。

「うぐっ! ホント頼むぜぇ…… 俺は今回落とすとピンチなんだぁ……」

 久遠は涙目で、死憐を見つめた。死憐は口元を引きつらせ、ぎこちない笑顔で久遠をにらんだ。

「俺は既にアウトだよ……」

 久遠は死憐から目をそらすように振り向くと、親子を見つめた。

「それにしても、あの親子…… 1年前に父親も帰依して……なんかあったのかなぁ?」

「……ふぅ〜ん…… ところであの母親は、いつまでに帰依させるんだ?」

「3ヶ月以内だ あの子は?」

「3日以内……」

 楽しそうに話す親子を、死憐と久遠は悲しそうに見つめた。

「じゃぁ……ちょっと始めさせてもらうぜ」 

 死憐は娘の真魅の元へ行き、肩を抱き寄せる様に座ると、耳元でささやいた。

「そろそろ帰らないと、お母さん疲れるゼ」 

 そう言うと、親子の会話に沈黙が生まれた。

「お母さん大丈夫? 疲れてない?」

 真魅は、母親真希の顔を覗き込んだ。

「うん…… 大丈夫よ……」

 真希は微笑んで真魅を見つめるが、少し疲れた感じに見て取れた。

「やっぱり…… 今日はもう帰るね 明日また来る」

 真魅は真希に手を振り、駆け足で病室を出て行った。

「あ! 気をつけて帰るのよぉ」

「はぁ〜い」

 真希の心配をよそに、真魅の返事は廊下の向こう側で聞こえた。久遠は死憐の見事なまでの人の操り方に息をのむ。死憐はそれを横目で見て、ニヤリと微笑んだ。

「さ、奥さん……横にならないと、お体に触りますよ……」

 死憐は真希を抱き寄せ、耳元でささやいた。真希は色っぽく死憐にしなだれた。死憐はそのまま、真希を優しくベットに寝かせた。

「てめぇ〜ナニ勝手してやがる」

 久遠は目を座らせ、口元を引きつらせながら、死憐の後ろから首にカマの刃を当てた。

「(笑いながら)いやっちょっと、ついでに……」

「頼むから、お前が触るなぁ」

「(笑いながら)そんなに信用無いのかっ!」

「死神様……ちょっとよろしいでしょうか」 

「わぁ!!」

久遠と死憐が言い合いをしている後ろに、老婆が突然現れた。老婆の現れ方があまりにも唐突だったので、死憐と久遠は飛び跳ねて驚いた。老婆は品の良い上等な着物を身につけ、礼儀正しく深々と頭を下げていた。

「なんだ ババァ……」

 死憐は冷たい目で、老婆をにらんだ。

「私はそこの者の古き血縁にございます この度は、サイの神様のお怒りにより、そこの者の家族が召される事となりました……」

「サイの神?」

 死憐と久遠は顔を見合った。

「はい、2年前の家族旅行で登山道のふちにあるサイの神様に粗そうを致しまして……」

「神罰ってことか?」

 久遠はマユをひそめた。

「まぁ、どのみち俺たちが動いた以上その奥さんは助からねぇ…… あきらめろ」

 死憐は気の毒そうに、老婆に言った。

「いいえ……助けてほしいのは、娘の方でございます」

 老婆はさらに頭を下げた。死憐と久遠は目で天を仰いだ。

「ババァ 表に出ろ……」

 死憐は老婆を誘い、病院の外に出た。病院は街中にあったため、人通りが多かった。たまたま霊感が強い女子高生が、死憐達を見てギョッとしているのに死憐は気づき、微笑みながらウィンクをした。

「死神様、無理を承知でお願い致します。」

 老婆はうつむきながら、死憐の後ろを歩いていた。死憐は大きくため息をついた。

「なぁ……ババァ…… さっきも言ったが、あきらめろ……神罰ならば、止められなかったお前にも問題があるだろ?」

「……死神様、お願い致します お願い致します……」

 老婆はすすり泣き始めた。

「いい加減にしろっ!俺たちだって、好きで人間の魂を刈ってんじゃねぇんだっ!!」

 死憐は振り向きざまに老婆を突き飛ばした。老婆はヨロヨロと車道に飛び出し、道路の真

ん中に崩れ落ちた。

「うわぁぁぁぁっ!!」

 たまたま霊感の強いドライバーが老婆に気づき、急ブレーキで老婆の手前で止まった。そのドライバーがホッとしたのもつかの間、後続車がその車に追突!!通行人は野次馬と化し、その場は騒然となった。死憐は目で天を仰ぐと、ため息をついた。

「すまねぇ……ババァ……」

 小さくつぶやくと、死憐はその場を飛び去った。老婆は着物のソデで顔を隠していたが、下クチビルをかみ締め、消えて行った。



 夜の11時をすぎた頃、真魅は机の上で鶴を折っていた。父親も死に、母親の真希も入院中の今は、伯母夫婦の家に住んでいた。

「早くお母さんの病気が良くなりますように」 

 真魅は1羽折るたびに鶴を両手ではさみ、お祈りをしていた。死憐はその光景を窓の外からのぞいていた。

「まいったな……」

 死憐は真魅の健気な行動に、悲しげに微笑み、目を伏せた。

「…… や(殺)らなくっちゃ……な……」

 死憐は冷酷なほど無表情になると、真魅の部屋の、隣の部屋の窓の前に立った。マントの中から、おもむろにガラス切りとガムテープを取り出すと、窓のロックを解除するためゴソゴソしだす。世の中のすべてのモノは、物体と霊体で出来ている。そのため死憐達は、物体の霊体を壊さないと、壁などを通り抜ける事はできないのである。ちなみに、霊体を壊す時の音がラップ音である。死憐は窓のロックを外すと、音を立てないよう家の中に入り込み、真魅のいる部屋のドアをそぉ〜っと開けた。すると真魅の後ろ姿が正面に見えた。

「?」

 真魅は疲れたのか、机にふせて寝ていた。死憐はホッとひと息抜き、真魅に近づいて行った。その時、鶴の束が目についた。

「千羽鶴……か……」

 鶴の一つを手に取ると、悲しげに見つめた。千羽鶴は半分くらいは出来ているようだった。

「早く作らなきゃ、間に合わないゼ……」

 目を潤ませつぶやくと、真魅を起こそうとしたが、机の写真立てが目に止まった。そこには父親と真希の間で、楽しそうに笑う真魅が写っていた。そして真魅の前には風雨にさらされ、顔もはっきりしないサイの神が写っていた。真魅はそのサイの神に両手をのせて写っていた。

「これか?」

 死憐は思わずつぶやいた。老婆の言っていた、サイの神の事を思い出したからである。

「……コレが天罰の元なのか?」

 少しムッとした感じで写真をしばらく見つめると、死憐は真魅の肩を抱き寄せ、耳元でささやいた。

「ギリギリまで待ってやるから、ガンバレ」

「わっ!! ??」

 真魅はその言葉で飛び起きるように目を覚ました。その時ふと家族写真が目についた。

「お父さん?」

 真魅は小首をかしげ、不思議そうにしていたが、気を取り直し鶴を折りだした。死憐はその光景を薄く微笑みながら見つめ、静かに家から出た。そして家の屋根の上に腰を落ち着かせると、パソコンを取り出し、真魅をどう殺そうか、データーを見ながら考えだした。

「……? 変だな……?」

 死憐は真魅のデーターの中に、サイの神の報告書が無い事に気づいた。神罰ならば必ず

あるハズであった。

「……まぁ、行ってみるかぁ……」

 死憐はため息まじりに、つぶやいた。



  つづく

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