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死神課・業
第3話
いざぁ(text) ELIOT(Illust)


 その日は天気も良く、小鳥達が元気にさえずっていた。死憐は小鳥達を見上げ、大きく深呼吸した。少し冷たい澄んだ空気が心地よかった。そこは眺めもなかなかで、小高く連なる山の間から見える、灰色の町並がアンバランスで死憐には新鮮であった。振り向けば、山の中に吸い込まれて行くように伸びる真っ直ぐな、整備された砂利道。その道のかたわらに、真魅親子が写真を撮ったサイの神がまつられていた。死憐はそれを見つけると、けわしい顔で近づいて行った。

「出てこい…… 聞きたい事がある……」

 死憐はサイの神を軽くけ飛ばした。すると煙のようなモヤが沸き上がり、白髪で白い口ひげを蓄えた仙人の形になった。

「朝っぱらから何用じゃ、無礼者」

「すまねぇな……急いでるもんで……」

 死憐は無愛想に名刺を差し出した。

「……ほぉ…… 9課の死神さんか…… シ・レ・ン?…… ああ……天女課のとデキてるって、ウワサの……」

「……ガセネタだ……」

 死憐は顔を赤らめ、仙人から目をそらした。

「そんな事より、この親子を覚えてるか?」

 パソコンを取り出すと、真魅の家族写真を仙人に見せた。仙人はそれを、食い入るように見つめた。

「んん……?」

「知らねぇハズねぇゼ お前の神罰とやらで、3人とも帰依する事になったんだ」

 死憐は無表情に仙人をにらみつけた。

「そりゃ難儀じゃのぉ……」

 仙人は、とぼけた顔でパソコンを見つめながら、腰にさしてあったキセルに煙草の葉を詰め、火をつけた。

「とぼけんじゃねぇゼ 報告書を見せろ……」

 死憐はパソコンをしまい、仙人の胸ぐらをつかむと引き寄せた。その時、1台のバイクが、砂利をけ飛ばし土煙を上げて走り去って行った。死憐は土煙にまかれ、咳き込んだ。

「最近はあんな不調法者ばかりじゃ……」

 仙人は死憐から顔をそむけ、ため息まじりに煙を吐くと、キセルの灰を死憐の手に落とした。

「あぢぃぃぃっ!!」

 死憐は仙人を放し、手を激しく振り、灰を落とした。

「わぁぁぁぁ〜……」

 山の向こうで男の悲鳴が聞こえた。さっきのライダーだろうか?死憐と仙人は悲鳴の聞

こえた方向を見つめた。

「……わしの神罰なんぞ、こんなもんよ……道から落ちて、悪くて骨折かのう……」

 仙人は涼しい顔で死憐をにらんだ。

「おまえさん 誰かに担がれたんじゃろう」

「くっそっ!! あのババァ!!」

 言うが早いか、死憐は仙人の前から飛び去った。仙人はあきれ顔でため息をつき、サイの神の中に消えて行った。



 死憐は急いで真魅の伯母の家に向かった。昼の1時を過ぎた頃、ようやく家に着いた。真魅は胸に大きなリボンが付いた、薄い黄色のワンピースを着ていた。

「お母さんの所に行ってくるね!」

 真魅は伯母にそう告げると元気よく家を飛び出して行った。死憐は真魅の元気な姿を見て安心すると、今度は病院に向かった。

「真魅 こっちよ真魅」

 真魅は声に反応し、振り向くと、そこには母親の真希が立っていた。真希は髪を綺麗にセットして、真魅と同じ色のワンピースを着て、にこやかに軽く手を振っていた。

「お母さん! こんな所まで来て大丈夫なの!?」

 真魅は心配そうに真希に駆け寄った。

「うん…… 今日はとっても気分がいいの」

 真希は真魅の手を取り歩き出した。

「ねぇ今日はどこ行くの?」

「いい所よ……」

 真希の口元が不気味に笑った。



 死憐は少しイラだち気味に真希の病室に入って行った。ベットの影に久遠が座っていた。

「おいクオン!! あのババァ知らねぇかっ」

「ああぁ…… シレ……ン……」

 久遠はどんよりと落ち込んだ感じで、死憐を見上げた。

「シレン!! この死神野郎ぉ〜真希さん知らねぇかっ!!」

 久遠はいきなりカマを出し、死憐に向かって振り回して来た。

「(笑いながら)だから、お前も死神だろうがぁ!!」

 死憐は久遠が振り回すカマをよけながら、後ずさった。

「真希さんがいなくなったんだっ!! お前があの時さわってナニかしたんだろっ!!」

「(笑いながら)そんなの知るかぁ!!」

 久遠はカマを振り回し、死憐を追いかけ始めた。死憐はカマの刃を寸前で交わしながら逃げ回った。この日は病室に三人いて、それぞれにベットでくつろいでいたが、そのうちの一人がナニか?異様さに気づいた。死憐も気づかれた事に気づいた。

「とにかく落ち着け! 人間に気づかれた!」

「知ったこっちゃねぇ!!」

 久遠は憎悪むき出しに突進して来た。死憐は瞬時にカマを出すと、刃の裏で久遠の胸を

思いっきり突いた。

「がはっ!!」

 久遠は病室の床に叩き付けられた。その時の衝撃音で病室に居た三人は驚きながら、一斉に久遠の方を見た。間髪入れず死憐は久遠を足で押さえつけ、カマの刃の裏を久遠の喉元に当てた。

「いっ今の音はなんですかねぇ」

「さっさぁ!?」

「そっそこでなりましたよねっ!!」

 病人達は口々に言い合った。

「静まれっ! なんでもねぇ……」

 死憐は病人達を冷たい視線でにらみつけ、指を鳴らした。すると病人達は何事も無かったように、またくつろぎだした。

「お前の邪魔はしねぇって、言ったハズだゼ」

 死憐は冷たい視線で久遠をにらんだ。

「すまん……」

 久遠は死憐の視線をそらし、うつろな目で遠くを見つめた。

「……でも、カラス達も見てないなんて、あり得るか? あるとしたら……」

「……俺たちのようなヤツが絡んでる……?」

 死憐は眉をひそめた。

「ああ…… 取り憑かれて霊波動を変えられると、髪型や化粧を変えただけで、カラス達だって見分けが付かなくなるからな……」

「……じゃぁ 真希さんを恨んでるヤツを片っ端から捜し出すしか無いだろう……」

 死憐は大きくため息をついて、久遠を押さえつけていた足を外し、カマをしまった。

「?恨んでるヤツ?? どうやって?」

 久遠は死憐を見つめ、起き上がった。死憐は目で天を仰ぎ、ため息をついた。

「パソコン出せよ 9課じゃ常識だゼ」

「5課は病死させればいいから、そんなドロドロ調べなくてもいいんだよ」

 久遠はムッとしながらマントの中からパソコンを取り出した。死憐は真希のベットに寝転び、ほおづえを付いた。

「まず現世だ 恨みを捜せ」

「へいへい うらみ、うらみ……」

 久遠は床に座りパソコンを操作しだした。

「8歳の時、友達の消しゴム隠して恨まれる……15歳、友達の彼氏を奪い…… 19歳、上司と不倫…… 22……二股の彼氏…… ちょっとぉ〜……真希さぁ〜ん……」

 久遠は、今の清楚な感じの真希からは想像しがたい過去に顔を引きつらせた。それを見て、死憐はちょっと困った感じで微笑んだ。

「まぁ、何も無いヤツの方が珍しいんだゼ それより、その中で恨みの強いヤツはいるか」

「うぅ……ん…… 特にない……な」

「んじゃ、次 過去世を開け!」

「? 待った この因縁ってなんだ?」

 久遠はパソコンの画面を死憐に見せた。

「なんだよあるじゃん それだよ」

 死憐は久遠を小バカにしたような口調で、パソコンのカーソルを『因縁』に合わせた。死憐の顔色は一瞬に変わった。死憐は久遠からパソコンを取り上げ、勝手に操作しだした。

「わっ! 勝手にナニすんだよ!!」

「ちょっと待てっ!!」

 パソコンの画面には300年前の真希達が家族写真を撮った場所が出ていた。そこは300年前は村があり、真希はそこで誤って奉公先の子供を死なせていた。子供を殺された女はかなり怨んでいたようだが、この世に転生はしていないようだった。

「カラスを呼べ! これをみせてみよう!」 

 死憐は真希と怨んでる女を画面表示した。久遠は窓に向かって口笛を吹いくと、1羽のカラスが窓辺にとまった。病人達はそのカラスに驚き、騒ぎだした。

「うるさい! 出てけっ!!」

 死憐と久遠はそろって指を鳴らすと、病人達は病室から出て行った。死憐はカラスにパソコンの画面を見せると、カラスはしばらく考え込んだ。

「?…… 駅の方に行ったかも?」

「じゃぁ、目指す場所はあそこかも!!」

 死憐と久遠は見つめ合い、声をそろえた。

「くっそ! 無駄足かもしんないから、礼なんて言わないんだからねっ!!」

「(笑いながら)ツンデレかっ!!」

 久遠は光の速さで飛び去った。死憐はそれを苦笑いで見送った。

「さて、俺もソロソロや(殺)らなきゃな」

 西の空がうっすら赤みを帯びていた。

「そう言えば、あの子…… 遅くないか?」

 死憐に嫌な予感が走った時、携帯が鳴った。



  つづく
  

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