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死神課・業
第4話
いざぁ(text) ELIOT(Illust)


 死憐は見覚えの無い番号に、一拍置いた。

「…… もしもし……」

「おまえさんはどこまで無礼者なんじゃ 電話は3コール目で、出るもんじゃ!」

 電話は、サイの神に宿る仙人だった。

「すまねぇな…… 今は寂しい年寄りの相手してるヒマはねぇゼ……」

「無礼者っ!! わしとて、用事がなきゃ電話せんわ!!」

「…… で…… なんだ……」

「難儀な親子が因縁背負ってやってきたぞい」

 死憐も光の速さで、病室を後にした。仙人は話しを続けた。

「わしは子供を殺された女が悪霊になったので、それを鎮めるためにまつられたんじゃ おまえさんがうまくやれば、わしの仕事も終了じゃ 頼むぞ!」

 仙人は言いたい事を言って電話を切った。

「こいつ……ハメやがったのか?」

 死憐はマユをひそめ微笑んだ。空は夕日に染まり、明日の晴れを約束していた。



「ねぇ〜お母さん帰ろうよ みんな心配しちゃうよぉ〜……」

 真魅は、すでに暗い森を歩く事に恐怖を感じていた。痛いほど手を引く真希に、違和感も感じて来たからである。

「もう少し…… もうすぐなの……」

 真希は真魅の心配をよそに、不気味なほど嬉しそうに歩いていた。

「おっお母さん!伯母さんが言ってたよっ! なんでもあきらめちゃダメだってっ! だっ、だから、もう帰ろうよぉ!」

 真魅はこれから自分に起こりうる事を薄々感じ取り、手を引く真希を止めようとした。すると真希は立ち止まり、真魅の両肩をしっかりつかんで膝まづいた。

「そうね……本当お前の言う通りよ あきらめないでここに居たら、お前に遇えたんですもの…… 本当に良かったわ」

 真希は真魅を突き刺すような視線で見つめた。真魅はその視線で、直感した。

「お……お母さん…… じゃ……ない……」

「…… そうね……これは違うわよね……」

 そう言うと、真希の中から死憐達の前に現れた老婆が出て来た。真希は力尽きたかのように、地面に倒れた。真魅の悲鳴が森全体に木霊した。老婆は真魅の腕をしっかり握りしめ、歩き出した。しばらく歩くと、小さな泉にたどり着いた。

「さぁ……今日からここで暮らすのよ」

 老婆は優しい目で、真魅を見つめた。

「イヤイヤっ!いやぁ〜!! 助けてぇ〜お母さぁ〜ん!!」

 真魅はジタバタ暴れるが、老婆の力には勝てず、ズルズルと泉に引き込まれて行った。

「ま…… ま……み……」

「お母さん!!!」

 真魅は力ない真希の声に振り向いた。真希はフラフラになりながらも、真魅達を追って来た。この時、意識はもうろうとしていたが真希にも老婆の姿が見えていた。

「あなた……誰? 真魅を返して……」

「お前にそんな事言う資格などないっ! お前達!!あの女を殺ってしまえっ!!」

 老婆は恐ろしいヤマンバに姿を変えると、悪霊達を呼び、真希にけしかけた。悪霊達は不気味に笑いながら、死肉に群がるハゲ鷹のように真希の周りを飛び回った。

「そいつぁ〜勘弁な 俺の仕事だっ!」

 久遠はカマを振り回し、悪霊達を蹴散らすと、真希のそばに降り立った。

「お前の望みがその子なら、この人はあきらめろ……」

「死神……」

 久遠はヤマンバをにらみカマを突きつけた。ヤマンバは憎悪をあらわに久遠をにらんだ。

「しに……神?」

 真希は目をしかめながら、久遠を見た。久遠は悲しげに微笑み、ウィンクをすると、真希はその場にへたり込み、気を失った。

「んで、ついでにその子もあきらめろっ!!」    

 久遠は目をぎらつかせ、ヤマンバに突進した。ヤマンバは真魅を抱きしめ、かばうように身構えた。久遠がカマを振りかぶった時、突然目の前にカマの刃が現れた。久遠はそれをバク転でかわした。カマは柄の部分が地面に突き刺さり、立っていた。

「殺す気かっ!!シレン!」

 久遠は上を見上げて怒鳴った。死憐は上空からゆっくり着地して、地面に刺さったカマを手に取った。

「死神のカマってぇ〜のは、命の糸を切る神聖なモンだからよぉ、血ナマ臭い事に使ってんじゃねぇゼ…… クオンさん……」

 死憐は久遠を冷たい目でにらみつけた。久遠はその迫力に息をのんだ。

「さて、ババァ…… その子を返せ……」

 死憐はヤマンバに背を向けたまま、横目でにらんだ。

「お前等に殺されるくらいなら、私が殺してここで一緒に暮らしますっ!!」

「……? なんであいつは、あの子にこだわるんだ?」

 久遠はマユをひそめた。

「因果じゃよ! あの子はあの女のその時の子供じゃった 時を経て、そこの女があの子の母親…… 難儀なこった……」

「へぇ〜…… ってお前、誰っ!!」

 久遠の横に、いつの間にか仙人がいて、死憐とヤマンバの動向をうかがっていた。

「わしはあの女の魂を鎮め、守るためにおるコトと次第によっちゃぁ、お前さんらの敵になるモノじゃ……」

 仙人はキセルに煙草を詰め、火をつけると、涼しげな顔で久遠をにらんだ。

「……ったく あいつぁ〜ホントに死神だなどんだけおれを巻き込む気だよ」

 久遠はカマをしまい、引きつり気味に仙人をにらみ、微笑んだ。死憐はヤマンバにカマを向けた。

「おれはその子の魂を、天界に連れて帰らねばならん! あきらめろ……」

「今手放したらもう遇えないかもしれぬ それだけは、いやでございます」

「なら未練を断ち、浄化しろ! そうすれば、転生もできる その子に遇う確率も増える!」

「だまされません! 未練で妖怪と化した私が、転生などできるワケありません!!」

「そうでもないぞ 今、その子との未練を断ち切れば、わしが何とかしてやろう」

 仙人が二人の会話に割って入った。死憐は仙人を横目で見て、困った感じで微笑んだ。

「おれも報告書に、今回おまえが関わった事は書かねぇ、見逃してやる」

 死憐はカマをしまうと、ヤマンバに薄く微笑んだ。ヤマンバはすすり泣きながら、美しい女の姿になり、死憐に真魅を返した。

「再び遇えたこの子が、若くして帰依する事が忍びなかったのです……申し訳ありません……本当に申し訳ありません 死神様……」

「あ、ああ……」

 死憐は切ない顔で、真魅を受け取った。真魅はすでに気を失っていた。女は何度も頭を下げ、仙人はにこやかにVサインで天に昇って行った。死憐はそれが見えなくなると真魅を見つめ、大きくため息をついた。

「今なら親子心中って事にしてもいいぜ」

 久遠はいたずらな目で、死憐を見た。

「ばぁ〜か 真希さんにそんな気ないのに、できねぇよ……」

 死憐は真希の隣に真魅を寝せると、その間に座り、二人の額に手を当てた。

「今日は二人で思い出の場所に来たが、道に迷い、一晩中歩き続けました…… はい!」

 死憐がそう言うと、二人は死憐の言葉を復唱した。死憐は微笑んで、真魅を抱き上げた。

「よっし!ふもとの町まで降りるゼ!」



 次の日の昼過ぎ、真希は見知らぬ病院のベットの上で目が覚めた。

「ここは……?」

「真希ちゃん!!」

 義兄が真希がベットの横に座っていた。

「お義兄さん!! まっ真魅は!!」

「大丈夫 良く眠ってるわよ」

 真希の姉が真魅のベットの横にいた。義兄は鬼の形相で真希に説教しだした。その病室の片隅に久遠と死憐はいた。

「どうすんだよ……時間ないだろ?」

 久遠は横目で、死憐を見た。

「天命の名のもとに、霊界に帰依する事を我が命ずる!」

 死憐は真魅に向かいそう言うと、真魅から真魅の霊体が浮き上がった。霊体にはしっかりとした命の糸が肉体についており、キラキラと金色に光るスジが見えた。

「あの光ってんのが、未練だ…… 今、命の糸を切っても、あれはこの世に残っちまう」

「あのババァみたくなるってか?」

「さぁな、未練が強ければそうなるな……」

「あの子の未練って何だろう……」

「ふっ…… そのうち分かるさ……」

 死憐が伏せ目がちに説明していると、魂を刈る時間が過ぎた事を告げるアラームが鳴っ

た。死憐は大きく伸びをした。

「天命あるまで、その肉体に魂を留めよ」

 死憐が指を鳴らすと、真魅の霊体は肉体に戻り、真魅は意識を取り戻した。

「おかぁ……さん……」

 真魅の意識が戻った事で、病室内は歓喜に沸いた。死憐はため息まじりに微笑むと、久遠に軽く手を振り、病室の戸口に向かった。その時、真魅は何か?を感じ、そこを見つめた。死憐は真魅の視線に気づいた。

「じゃぁな……」

 薄く微笑みウィンクすると、死憐は病室を出て行った。真魅は病室の戸口を見つめて涙を流し、小さくつぶやいた。

「うん……またね……」



  おわり

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