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テンプレート?・ラヴ
第1話

text 深瀧ほくと / Illust たま


 婚礼を盛り上げるべく集まった人々が、新郎新婦を取り巻く式場の出口。

 新婦が、ブーケを投げた…新婦の満面の笑みは、誇りの輝きを幾重にも帯びていた。

 「我が友よ、次、あなたの番よ〜」

 新婦のこの言葉に、新婦の親友は敏感に…

 「何か悔しいけれど、次は私の番よ〜」

 ブーケに向かって手を出す親友。

 「ぱふっ!」

 音はしたが、親友の手にはブーケはなかった。

 「う〜っ!!!」と言う苦しそうなうめき声とともに、人が倒れた。

 「げっ、手元が狂った」

 新婦が叫び声を上げた------自覚しているかしていないか判らないが、新婦自身それなりに自らのミスを理解したような声色だった。

 「(何てことだ。俺はこんなノーコン女と結婚したのか…)」

 新郎は、最近目立ってきた抜け毛を気にするような仕草を取った。

 一方、倒れていた人が起き上がった。夏服のブレザー、女子高生らしい…

 「花嫁ブーケ、これは不幸か幸運かっ!」

 転んでもただでは起きない。

 「無論、幸運だ!!!」

 ブーケをつかみ勝ちどきを上げ、天を見つめる倒れたけれども起き上がった彼女…

 「花の17才、味潮崎つくね、只今の災難、我が男運上昇の兆しと見たーっ!!」

 しかし、つくね、また地面に倒れる。

 「立ち上がる!」

 つくね、また倒れる。

 「何それ、私は不屈だ!」

 つくねが、強烈に七転び八起きする有様を見た新婦の親友は恋人にもたれかかる。

 「あの娘(こ)、幸薄いのかしら…私以上に」

 親友の恋人は、親友に寄りかかられて、とてもうれしそうだった。

 「(おいらは幸せだよ〜)」

 ポンプで動くカエルのおもちゃのように、突き進むつくね。しかし、彼女の眼差しには勝利の予感があった。

 「い、いつまでこんな格好で歩いてなきゃいけないのかしら」

 つくねは元通りの歩き姿に戻り、いいや、

 「スキップスキップ、らんらんらん」

 機嫌良さそうにらんらんらん… いいや、スキップをしてどこかに行こうとしている。そんなつくねの後ろ姿を見つめる新婦。

 「お嬢さん、幸せにね…」

 そんな新婦につっこむ新郎。

 「謝るべきだったかも…」

 そんな二人を見て、改めて、さっき起きた事柄を振り返る、新婦の親友。

 「ぶ、ブーケ…」 そう言いながら親友は自分が浮いているような気もした。

 「お嬢さん、ゴメン〜!!!」

 そして、新郎に言われ、取って付けたかのように謝罪の言葉を叫ぶ新婦だった。つくねはスキップし疲れたのか、ようやく普通の歩き方に戻って歩いていた。いつか近いうちくるかもしれない、と思う、我が幸せの可能性をかみしめていたつくね。

 「(彼氏ゲット!)」

 つくねが発した心の叫び声…

 「(彼氏ゲット! 彼氏ゲット!)」

 同じ言葉を繰り返す心の叫び…

 「(彼氏ゲット! 彼氏ゲット! も一つおまけに彼氏ゲット!)」

 しかし、ふと我に返るつくね。

 「あ、ブーケ持ってくるの忘れた」

 七転び八起きしているうちに、ブーケを落としてしまったらしい。だが、式場に戻るにはずいぶん距離が離れてしまった… と言うのも、結局、つくねが、端から見たらヤバげなテンションで周りの目線も顧みずに突進し続けたからだ。要するに車にはねられたりのような事故に遭わずにすんだ、というのが奇跡というか、何ちゅうか、本中華… と過去CMをあえて持ち出して説明するまでの事柄ではないかも。

 つくねがこれから巡り会うかもしれない、新たなる恋が成就する予感なのか、それとも単なるスカなのか…

 「スカ、ですって〜!!!???」

 つくねは、自分の予感に確信を抱いていた。新たな恋の予感。出会いのシチュエーションが、幾重にもつくねの脳内を駆けめぐる。

 「スカじゃない、スカじゃない、ホントの恋よ〜♪」

 つくねは恋に浮かれた様子なのか、やや調子はずれなまでの歌い方の歌が、彼女の脳裏を駆けめぐっていく…

 「セーラー服は、ウチの制服じゃない、ウチの制服は、ブレザーなのよ♪」

 無論、字余りになるのも想定外ではない。

 「ああ〜、恋の行方のように〜♪」

 ここまで行くと、某作詞家の替え歌メドレー風になってしまうので中断したい。

 「(誰かにぶつかるのが恋の始まりというのは、私には全然面白くないわ。それだったら、むしろぶつかる前で寸止めして、その人に一目惚れという方が100万倍もましよ)」

 「(下駄箱にラブレター…、もし間違ったら読まれず踏んづけられるのが関の山ね)」

 「ツンデレ… 一発で振られたいとでも思ってるの?」

 色々な恋のシチュエーションが、つくねの頭を駆けめぐる。いちいち記していると長くなるが、つくねの知りうる範囲での古今東西の恋愛ストーリーがベースだろう、と言うことしか、現時点では書けない。なぜかというと、具体名をそれぞれ書くと物語の進みが…

 「まずは、待ち合わせ場所に行くのみ!」

 別に、つくねが恋しているわけではないが、一応、友人としてつきあいのある男子同級生、名前は雲明司には会っておこうと。

 雲明司は、ファミレスで空腹のまま、つくねを待ちわびていた。

 「つくね…遅いなぁ…もう注文する…」

 ようやく目的地に着いたつくね、同級生のいる席へと向かう。

 「遅れすぎてゴメンゴメン」

 雲明司は空腹だった。

 「つくねさん、普段にもましてご機嫌な様子ですが、何かいいことございましたか」

 昼飯の予定が夕食になってしまったのだ。

 食事をする前は少なくとも二人は、『清楚な美少女と物憂げな美少年』だが、

 「ご注文の品が参りました〜」

 実際、食事がはじまると………

 「ムシャムシャムシャ、バクバクバク」

 そんな面影など、異次元の彼方にでもやってしまうかのような、ものの見事なる阿修羅がごとくな喰い様だった。

 「ね、私、今日、花嫁ブーケを顔に喰らって転んだけれど、とても幸せになる予感がしたの。彼氏ができて、そして、今日のようなジューンブライドが私にも…」

 雲明司はつくねのこの話を聞きながら、心の中で心配していた。

 「いつもの勘違いでないことを祈る…今の食べ様見ていると、コンマ3秒で失恋するぞ」

 しかし、つくねは自分の持ち金が意外と無いことに気づいた。

 2000円あるかないか------そこで、祖父母に低姿勢でおねだりをする。

 「お爺さん、お婆さん、つくねは空腹を克服します。先立つ物の…よろしく、お願いいたします」

 雲明司は、申し訳なさそうに一言、

 「僕が彼女の分も払ってあげますので…」

 お爺さんは、つくねの様子を見て、

 「(自分の持っている金の分以上も喰らうつもりだな)」

 と、現時点では色気より食い気としか思われない、我が孫娘を心配する様子だった。

 その様子を見てお婆さんは笑っていた。

 ただ、ここにいる客達は4人の姿を見て、身に迫る危険こそ感じないものの得体の知れ

 ない恐怖に包まれていた。食べながら会話というあまり奨められた行動じゃないことをしながらも、そこそこ会話が成立しているという二人。

 それを冷静な眼差しで、かつ慈愛を持って接している人物がそばにいると言うことで、その周りにとても入ることのできないIフィールドらしき、判りやすく言えば4人のそばに近寄りがたい空間が発生したことに、他のファミレス客は恐れをなしていたのだろうか。

 しかし、口の周りにケチャップとタルタルソースとほんの少々のマスタードが付いていた雲明司は、

 「『私、もう少し結婚式場にいていいかしら? 一応、招待客だし、なかなか巡り会えない名シーンを一度でもいいから見てみたいの』」

 という、一応、招待客としては一緒にいたつくねを思いとどまらせることができなかったことについては、痛恨の念を抱いていた。

 「お腹空いてないのか?」

 と言った一言で、つくねを説得できなかったことを公開してはいた。食べながら。

 2、30分ほどして、ようやくファミレスの一角にあったその異界らしき空間は消滅した。

 「ごちそうさま」

 つくねの天使のような笑顔------4人が食事を終えたからだ。

 「ご会計の方は(以下略)」

 と言うやりとりがあって、無事食事が終了した頃には、すでに日が沈み掛かっていた。

 夏至の日が近づく、ジューン・ブライドのとある一日が過ぎようとしていく…

 ただ… ただ、この食事で誰が金を払ったかは定かではない。無論、詮索するのはヤボだからあえてする気も起きはしないが。


第1話・終わり

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