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テンプレート?・ラヴ 第3話
text 深瀧ほくと / Illust たま
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梅雨の晴れ間の昼下がり。つくねは一人歩いていた。
「たまの晴れの日、そして休日。木漏れ日を浴びながらのお散歩。みんなみんな…って、どういう口調になっているのよ、私」
機嫌がよいから、つい、口からでまかせになっていたようだったのかも。
そんなつくねをつける人影… ストーカー?
そうとも知らずに、つくねは歩行者専用道路を一人ゆったりと歩み続けていく。季節が季節ゆえに日差しはやはり暑く、その日が照らす場所はそれなりの熱を帯びているようであり、でも、まだ完全に暴力的でもないので、人を寄せ付けぬほどの熱は出し切っていないそんな日差しだ。
「私が投げたブーケを間違って喰らった娘かしら、背格好が似ているわ」
つくねを追いかける20歳代半ばの、なぜだかウェディングドレスを着た女性。彼女が、つくねの後をつけているのだろうか。姿を隠しつつ、つくねに迫っていく。
つくねは、さすがに日差しの強まりを感じたのか、木陰の方へと足を運んでいく。
「なんと言っても梅雨の合間っていったらやっぱり夏なんだね〜」
のんきにひとりごちるつくね… だが、彼女をつける人影は、だんだんと確実につくねの方に迫っていく。オーラさえも出すかのような鬼気を持って。
「いよいよ、目的に接近!」女性の大声。
「何なんですか、いきなり」つくねは、声のする方向へと顔を向ける。
「お嬢さん、何か忘れてはいませんか?」女性は、つくねに呼びかける。
ウェディングドレスの女性はその麗しき顔を正面に向け、つくねに向かい、
「私、南街ゆうか、旧姓では鮨丸ゆうか、若き娘よ、このブーケを受け取り給え!」
と叫ぶ。ものすごい大声で、なおかつ、深刻な表情を顔に浮かべている。
「え、いったい何のご用事ですか…」つくねはあっけにとられている。
「受け取りたまえ、娘よ!」ブーケをつくねの前に差し出すゆうか。
「どのような意図で、私にこのブーケを受け取って、と…」
ゆうかのブーケ差し出しの腕を避ける、つくね。
「結婚式の時にブーケを喰らって、その後にいきなりテンションが高くなった、悲劇の娘さんかとお見受けして、是非ともあらためて!」
つくねはゆうかのブーケ攻勢を懸命に避け続ける。そして、つくねはゆうかに、
「でも、今、改めて思い出したんですが、あの時『私のブーケ、私のブーケ』って、悲痛な叫び声を上げていた女の方の声が、聞こえていたような気がするんですよ〜。それに、ブーケは忘れたとはいえ私は受け取っていないから、結婚までは行かないと思うし、結婚できる年齢だとしても、私自身、まだそれには早いかなって。なんで、悲痛な叫び声あげていた女性に、このブーケをプレゼントしてあげてください」
つくねの譲歩にもかかわらず、ゆうかはブーケをつくねに手渡そうとする。
「あ、その人? 私の高校時代からの友人で平他野智沙美っていうんだけれど、彼女、わざわざブーケを受け取らなくったって結婚できない人じゃないし、彼女はそんなに嫌なことは後に引かないタイプだから、別にあなたが心配しなくてもいいのよ、だから… このブーケ、受け取って、お願い、娘さん!」
ゆうかは、飛びつくようにブーケを渡そうとする。しかし、つくねは背面月面宙返りでこのゆうかによるブーケ手渡し攻勢から逃れる。だが、ゆうかはブーケをつくねに投げ渡そうとする。それでも、後ずさりをして、つくねはブーケを受け取らず、そのブーケは、落ちそうになるが、ゆうかは、すかさずブーケが落ちる前に拾う。そして、つくねの背後に回り後方からブーケを手渡そうとするが、それを察知したつくねはジャンプして、その攻勢を避ける。ゆうかは、それでもつくねにブーケを手渡そうとするがつくねは避ける。
「聞き忘れていたけれど、お嬢さんの名前をたずねるの忘れていたわね… お嬢さん、お名前なんておっしゃるのかしら?」
ゆうかの『あなたのお名前なんてーの?』攻撃(いや、いくらなんでも…それは大げさすぎる)に、回りに聞き取れるかもしれないほどの声量でつくねは答えた、
「味塩崎つくね、と申します。自己紹介が遅れてすみません」と。
この文字面だけを追うと、ごくごく普通の会話の一部のように思われるが、何せ現時点では、二人は殴ったり蹴ったりのような攻撃や、暴力的に相手を攻めたりすることは全くないものの、それ以外では、まるでどこかの格闘技アニメか格闘技特撮のような、異様にヒートアップしたアクションの繰り返し、それも次第にエスカレートしていく兆しさえ、それには見て取れるように思われるつばぜり合いとなっているので、全然、普通とか言えるような状況ではない。
「味塩崎さん! お願いだから受け取って!」
「いえ、他に受け取るべき人がいらっしゃるはず…」
「それでもやっぱりあなたが受け取ってくれないと、やっぱり問題が…」
「でも、私のような若輩者には受け取る資格なんぞ…」
「いえ、あなたこそ、次の幸せが約束されたから、受け取るべきよ!」
「でも、平他野さんが、受け取るべきと」
「彼女は、彼女自身でなんとかできるわ!」
「南街、旧姓・鮨丸さん! 私はまだ若いから…」
ブーケを突き出すゆうか、それを謙虚に拒む(はずの?)つくね。二人の競り合い?は、まだ雌雄(?)を決するまでには至っていないというか、見る人が見る人だったとしたら、「闘いはまだ始まったばかりだ」と言う論評さえも述べかねないほどの状況が、いまだに続いていると言えるだろうか…推定経過時間、1時間強。
「とにかく、味塩崎さん、受け取って!」ゆうかが叫ぶ。
「南街、旧姓鮨丸さん、それは、あなたのご友人・平他野さんに差し上げてください」
つくねが切り返す。そんな応酬が繰り返される。
つくねの額に大量の汗… つくねの体中が、大量の汗まみれになっていると推し量れることさえも想像できうるだろう。一方、ゆうかのウェディングドレスもいよいよもって、ヨレヨレとなってきた。絶対に動きにくいと言われるというウェディングドレス姿であるにもかかわらず、奇跡的なほどの機敏な動きを途切れることなく続けてきたゆうか、彼女も体中汗だくでなおかつこの暑い日差しだ…現時点では熱中症、近い将来には皮膚のシミが…それらが心配される。熱中症については、つくねも同じだ。ただ、二人が為しているこの競り合いには、二人の肉体上の限界を超えてさえも、それでも譲れない部分があるのかもしれない、と、思えてしまってならないが、それについての論評を、地の文で行ってしまうと、物語がつまらなくなるおそれがあるので控えようと思う… え?何だって?? 控えていない?
所変わって、図書館。その図書館から司が出てくる。
「暑いときでも読書なのかな…まっ、いいか」
司は、まだ、その時、近くの街路樹に囲まれた道で何が起きているか知る余地もない。なので、普通に家路につくつもりだった…普通だったら図書館での学習は大分長くなり、夜までつづくのに、この場合、彼が夕方まで図書館にこの時はいなかった、という事柄については、別に語る必要も無かろう。何せ、語るとそこそこ長くなる上に物語としても…
「街路樹か…少し遠回りするけれど、こっち通って帰ろう」
司は、やや季節を先取りした暑さに参ったのかもしれない。直射日光を浴びたくないのも無理もなかろう。
「木陰って、こんなに涼しくなるのかな…」司は、こうつぶやきながら、歩いていく。
「近くで女性の話し声が聞こえる…井戸端会議かな…」まだことの真相を知らない司。
司は、木陰で少し和らいだもののまだ暑い日差しの残る歩行者専用道路を歩き続ける。
司の視界に人影が入ってくる…二人の人影。
「井戸端会議にしては人数が少ないかも… でもそのわりには声が大きかったなあ…」
そんな、ゆったりしたまったり感を持ったまま、司は歩み続ける。
司が歩みを進めていくと、二人の人影が尋常じゃないほどの動きを示している。
「え、これって大道芸人? ぴょんぴょん跳び回っているみたいだが…」
司にはまだ事情が飲み込めていないようだった。
つくねとゆうかの方だが…相変わらず、雌雄(?)を決してはいないようだった。
「味塩崎さん! お願いだからこのブーケ、受け取って!」
「いえ、他に受け取るべき人がいらっしゃるはず。それに私はまだ若いから!」
相変わらずではある。
司は、声のする方向に歩みを進める。
「どうなってるんだい?」
司は、ようやく事情はつかめた。
「つくねと怪しいウェディングドレスの女性がキャットファイト!早く止めなくては」
司は、つくねとゆうかの緊迫した競り合いを止めるタイミングを見計るが、二人の間になかなか隙ができず、なお、失敗したら司の側にとてつもないダメージがありそうで、慎重に状況を見守るのみだった。------無論、キャットファイトを見守るのが、司の趣味ではない。------ 開始から推定で2時間ほど経ったと思われるこの闘いにはまだ勢いが衰える様子が見えなかったからである。
そして、待つこともう少し。司は二人の隙を見きった。
「少し日が傾いてきたのが判るような判らないような… 今だっ!!」
ゆうかがブーケを差しだそうとする所に、司はつくねを護るかのように現れ、そして、ゆうかの行動に立ちはだかるかのような仁王立ち。
「新婚さん、何を血迷っているのですか!」
司の大声にふと我に返るつくね。しかし、ゆうかは、相変わらずブーケを差しだそうとして肩で息をしている。
「お願いだから受け取って!」
「つくねさんが嫌がっているではありませんか」
「男でもかまわない、お願いだから受け取って!」
司は、我を忘れたゆうかの行動を懸命にさえぎる。
「理性を取り戻してください、新婚さん!」
「男でもかまわない、お願いだから受け取って! 本当に」
こういったやりとりが繰り返されたが、司にも限界が…
「つくね、逃げろ!」
つくねは、一目散に逃げ出したが、我を忘れた、偽バーサーカー・ゆうかは、つくねを追いかけようとする。
「待てー! 我が妻よ!」
つくねを追いかけようとするゆうかに水が浴びせられた。
地面に大の字に倒れるゆうか。それを引きずり運ぼうとするゆうかの夫。
「ああっ、何てことしたの! 私としたことが!」
ようやく我に返るゆうか。赤面と涙目で平謝りだった。
「娘さんに落とし物を届けようとして断られたところで、私があきらめればよかったのに、もう…私としたことが… ごめんなさい、ごめんなさい」
ゆうかは、夫に、そして、つくねと司にも謝罪した。
つくねと司は、特に危害も加えられなかったので謝罪を受け入れた。夫は、そんなおっちょこちょいな新妻・ゆうかになぜかまた惚れた。
「ドジはしてもいいが、他人には迷惑をかけないようにな」
「光さん、判りました。もうドジはしません」
ゆうかをお姫様だっこしながら、ブーケを持ち帰る、光。
司はその新婚夫婦の様子を見て呆れる。
「そんなに『あばたもえくぼ』なのかな…」
つくねは、それでもその新婚夫婦に憧れを抱く。
「どんなあらゆる艱難辛苦をも乗り越える感じがしていいわ、あのご夫婦」
「えっ」司はつくねの言葉も理解できない様子だった。
つくねは、司の方を見てそしてさらに彼の腕を両腕で抱きかかえる。
「でも、司も素敵だったよ。私、惚れちゃった」
つくねの告白。司も悪い気分ではない様子だった。
「(青い鳥のように幸せが近くにあるなら、それを逃すなんて面白くないもん)」
つくねは、司に寄り添いつつ、司の家へ共に歩んでいった。
第3話、そして、このお話・終わり
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