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ある雪の降る朝だった。登校途中だった俺は白く染めた道で一人の少女と出会った。
その少女は雪のような白い肌をし、大きくつぶらな瞳はなぜか赤かった。
髪はロングで、白髪……恐らくは外人なのだろう。白い制服と学校の校章からはうちの高校だという事が分かる。
少女はゆっくりとした足どりで、俺に近づき、訛りの無い日本語で俺に話しかける。
「宮島雄太さん……ずっと昔から好きでした……私をお嫁にしてください」
いきなりの話に俺は呆然とするしかなかった。何しろ俺はその女とは初めて会った……同じ高校らしいが……そもそも一度も会ったことがない。
「ちょっと待て……お前誰だ?」
「はい? 雄太さん……私を覚えてないんですか!?」
少女は涙目でうるうると赤い瞳で俺を見つめる。
「ああ……分かったよ……とりあえず名前言ってみろ」
女はまるで怯えた小動物のように激しく動揺している……まさか今更恥ずかしくなったのか……
「う……う……う……」
「う?」
「う……うさ子です!」
「名字は?」
「宮島です!」
「うっ!? 何で俺と同じ名字なんだ」
「結婚するから同じ名字です! 今、決めたんです!」
俺は思わず頭を押さえる。このうさ子という女はも頭がおかしいようだ。
「聞いた俺がバカだった……で、どこで俺の個人情報を買った?」
「雄太さん本当にうさ子の事を忘れてるんですね……まあ、良いです。実は今日、転校してきたんですよ! うさ子は雄太さんと同じクラスメイトになるんですよ……好きな人と同じクラスメイトですよ」
とりあえず俺はうさ子の言葉を聞かなかった事にする……こういう女は無視に限る。
「ちょっと雄太さん! 私の話を無視しないでください!」
それからというもの、うさ子は俺の後に何処にでも付いて来て、話しかけるようになった。
授業の時、昼休みの時、そして……
「雄太さんは本当にうさ子の事を覚えてないんですか? 雪山で怪我をした時に助けてもらったうさ子です」
「お前な! 時と場所を考えろよ! ここがどこだか分かってんのか!」
「トイレです!」
この女は男子トイレに入ることに恥らいというものはないのか? うさ子のせいでさっきから動揺している男子生徒がちらほらいる。
「なら、いい加減に気づけ!」
「トイレは男が語り合う場所だと聞いてます! うさ子も男子のように熱く語りあいたいのです!」
「出てけバカ野郎!」
俺はうさ子をトイレから強制的に排除した。うさ子は驚いた事に男子トイレから追い出された事に納得できないのか、口をへの字に曲げていた。
間違いなくあの女はおかしい。
(2年A組の宮島雄太さん……体育館倉庫に来てください)
「呼び出しかよ……って、何で場所が体育館倉庫なんだ?」
そう言って体育館倉庫へ行ってしまう俺もどうかしているのだろうか? 例えば女美人教師やかわいい女の子が待っていたりとか……そんな訳はないと思いつつも俺は体育館倉庫の扉を開けた。
そこに居たのはマットの上で寝転び、こちらを上目づかいで見つめてくるうさ子の姿だった。
――― つづく
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